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そして、上半期を過ぎた頃に

ラストホープ (創元推理文庫) ミドルセックス …面白い作品に出会うもので。

 ジェフリー・ユージェニデスミドルセックス』は6月頭から遅々として進まず、ようやっと気合いを入れて先日読み終えました。こりゃ面白いですよー。半陰陽という、ちょっと難しい話だったりもしますが、ヨーロッパからアメリカに移民してきた家族の半世紀として非常に楽しめますし、民族性とアメリカ市民的な葛藤、世代間の格差など、興味深い話が盛りだくさんでした。何よりも、移民一代目であるデステモーテ(イアイア)の、年を取ってからの強烈なキャラクターがいい! 恨みの団扇とか、まるで魔女のような扱いです(笑)。彼女は、国を忘れないことでアイデンティティを保っていたのでしょうね。舞台がデトロイトなので、みんな何かあるとすぐカナダに逃げようとするのも、そういった地域性を感じられていいなあ、と思うし、アメリカの経済が発展して衰退した時代の影響を一番受けている都市ということで、時代の移り変わりを見ることもできます。そして何より、語り部であるカリオペの、ふたつの恋の話も切ないです。分厚いけど、週末を使って、一気に読んでください。一度入り込んだら今度は離れられなくなりますよ、きっと。

 そして、今読んでいるのが浅暮三文の『ラストホープ』。浅暮さんというとどうもカルトっぽい雰囲気というか、玄人好みっぽい印象がありますけど、この作品は非常に楽しめます。偶に「マンボズボン」とか、よく分からないものが出てくるのはご愛敬。視点がめまぐるしく変わるしその主が誰かをあまりはっきりさせないので最初は地味ですが、中盤にさしかかる辺りから、俄然調子が出てきます。あらすじを見た瞬間、ドナルド・E・ウェストレイクのドートマンダーシリーズを思い出しますが、決して二番煎じではありません。浅暮テイスト満載のクライム・コメディ。万人に勧められる浅暮作品(失礼…)ではなかろうかと。やっぱり、婆ちゃんが元気な作品は楽しいですね(違)。釣りの描写が沢山出てくるのも、なかなか楽しめます。それ自体がテーマにも結びついているし。