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フランク・アバネイル他著『世界をだました男』ISBN:4102227210

 あるときはパンナムのスマートなパイロット、あるときはハーバードロースクール卒の法律家、またあるときは悠々自適の生活を送る医師…そんな彼はなんとティーンエイジャー。
嘘のようなホントの話。裕福な家庭に生まれた彼は、金のうまみを知っていてとうとう自由を得るために家出 をしてしまいます。しかしまっとうに働いて金を得るなんてまどろっこしいことするわけが無い。いきなり、パンナ のパイロットに化けて、空港、そして世界を闊歩するのです。後ろめたい気持ちよりも、断然周囲の潤んだような憧れの視線にうっとりしてしまう。絶えず聞こえる追っ手の足音を聞きながらも、小切手処理のからくりと 盲点を突きながら、とうとう5年間の豪勢な逃亡生活を送ることになります。捕まってもその機転でピンチを切 り抜ける。犯罪者の筈なのに読んでいるとどんどんアバネイルに引き込まれていく。その場にいたら、逃亡に荷担してたな、きっと。

しかし早足が過ぎた人生は早々に失速する。スリルたっぷりの日々にうんざりした彼は、母親の故郷である フランスの片田舎に引っ込み、隠遁生活を送るのだけれど、ここでも「小説家」と名乗るその見栄っ張りぶりは健在なのがなんとも。けれど、とうとう正体がばれて捕まってしまいます。それにしてもフランスの当時の刑務所?には犯罪者には人権を認めないようなところだったんですね。光も入らない穴倉のような牢獄で、恐ろしい拷問を受けます。 しかし、悪運の持ち主とは彼のことなのか、別件の逮捕で、身柄はスウェーデンに?移送されます。ここでの扱いはフランスとは天と地の差で、ここで穏やかで建設的な刑期を過ごしたあと、第二の人生をやり直すことになるんです。それが、今の詐欺対策のコンサルタント業の始まりだなんて、なんとも贅沢な人生じゃありませんか。

自分では経験したくないけど、このスリルと興奮、本だけでも十分に味わえます。美貌と運と才能を、あらぬ方向に発揮した著者本人の半生記を、とくとお愉しみあれ。