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BOOK

リュドミラ・ウリツカヤ『ソーネチカ』(ASIN:4105900331)

平凡な女性の非凡な一生。その一言に尽きるだろう。芸術の才能を持つ夫に尽くす人生は、確かに現代に生きる私たちには受け入れがたいものがあるけれども、こういった、一見「与えるばかりの人生」というのもアリなのだろうなあ、と感じた。容貌のパッとしな…

イタロ・カルヴィーノ『マルコヴァルドさんの四季』

おそらく、イタリアと思われる国の都市に住む、マルコヴァルドさんという貧しい男性とその家族の四季を描いた作品。貧しいが生命力のたくましい市井の人たちの様子が暖かい視線で描写され、大人が読んでも十分に楽しめる作品ではないかと思いました。 因みに…

阿部和重『シンセミア』ASIN:402257870X / ASIN:4022578718

休暇中に一気に読了。決して読んでいて気持ちいい話ではないので下巻に移るのが辛かったのだけれど、物語の牽引力は十分にあります。 山形の果樹農家地帯の神町。かつては空軍や進駐軍が、そして今は航空自衛隊の駐屯地が大きく陣取っていて、そこの家族が大…

阿部和重『シンセミア』ASIN:402257870X / ASIN:4022578718

こちらはまだ読んでいる途中なので、あまりきちんとした感想は書けない(って、今まできちんとした感想を書いたことがあったのかは疑問ですが)。芥川賞候補になった『ニッポニアニッポン』以来、2年ぶりになる待ちに待った新作。連載形式で追いかけて読むのは…

イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』ASIN:4309462294

河出書房新社が河出書房だった頃から出ていた『マルコ・ポーロの見えない都市』が、装いも新たに文庫で登場。私は、入手しづらかった時期にネット古書店で手に入れ、そのまま積ん読状態にしていたら復刊されたりして「こんなに苦労して集めてる私って!?」…

アン・タイラーコレクション

文春文庫から出版 『ブリージング・レッスン』(ピュリツァー賞) 『ここがホームシック・レストラン』* 『パッチワーク・プラネット』* 『歳月のはしご』 * -- 新刊では入手困難

アン・タイラー

今更アン・タイラーなぞ読んでおります。白状すると、タニス・リーと混同してまして(どうして!?)数年前に他の方からお勧めされたというのに「どうしてタニス・リー?」と不思議に思い、放置状態にしていたのでした。 確か、書店で『歳月のはしご』を見つけ…

古屋兎丸『π』3巻

だ、ダメだー。何だ、このギャグの爆発っぷりは。もう、次から次へと笑いどころが出てきて参った。話は、2巻の最後に出てきた強敵との闘いが本格化したという話なのだけれど、最初の方だけ読んで念のため最後の方のページをちらりと見たら、「あれ、これって…

古屋兎丸『π』2巻

がーん、ますます変態チックだ(笑)。今まで孤独にπを研究し続けた夢人くんも、前巻では千聖先輩という同好の士を得て「パイダーマン」なる変身ヒーローに自らなりきったりして生き生きとしている。1巻の冒頭の「孤高の戦士」の面影はあまり無くなっている。…

渡辺満『なぜ人はジュンク堂書店に集まるのか』ISBN:4426765013

著者は、立ち上げ時からジュンク堂書店の経営に携わり、長いこと総務部長を務めた人物。どうやら、退職したところで自分を通じて見たジュンク堂書店を書きたくなったようだ(ホントは違うかも知れないよ)。 ジュンク堂書店という書店は、以前は遠い存在でしか…

山形浩生『たかがバロウズ本。』ISBN:4756330169

最終章から後の補遺が思った以上に長く、しかも遊んでいたように思うのですが(笑)。以前の私の読書の仕方ではこの辺りに引っかかる可能性は殆ど無く、バロウズ自体も何となくSF作家だと思っていたところ、ブローティガンの本を読んでビート・ジェネレーショ…

ジュリアン・バーンズ『10 1/2章で書かれた世界の歴史』ISBN:456007108X

いやー、面白かった。10章+1章がそれぞれ短編として読んでも楽しかったし、それがまたどこかで何かにつながっているという感覚もまたわくわくした。いろいろな形で「小説」を楽しませて貰ったし、ほんのちょっと知識も付いたようなお得感もある。多分、短編…

ジャネット・ウィンターソン『オレンジだけが果物じゃない』ISBN:4336039623

狂信的な母に引き取られた少女ジャネット。その価値観の中で生きてきたのが学校でそれが中心じゃないということを嫌というほど思い知らされ、その世界からつまはじきにされる。しかし、安住の地であった信仰の世界でもまた、彼女は異端者にならざるを得なか…

ティム・ボウラー『嵐をつかまえて』ISBN:4560047553

「覆水盆に返らず」。だったら、その現実を見据え、どういって生きていったらいいのか。そういう選択こそが、人間性を際だたせるのだ。 ある夜、兄弟での留守番を頼まれたというのに、長男のフィンは友達の家に遊びに行っていた。だって妹が「大丈夫だ」って…

斎藤美奈子『趣味は読書。』ISBN:4582831427

出版不況と言われる中で突如出現する「ミリオンヒット」。しかし、周囲ではそれらを「読んだ」という人に会ったことがありますか?無いでしょう。だって、「本を読む人」自体が現在では少数民族なんですから。そんな中でこういった本はどんな人が読んでいる…

舞城王太郎『世界は密室でできている。』ISBN:4061822462

『煙か土か食い物』などの奈津川ファミリーサーガの外伝的な位置づけ?講談社ノベルスの20周年記念による、メフィスト賞作家の密室競作本の一冊。彼にこんなもの書かせたら大変なことになるだろうと思ったら案の定。残忍な殺人事件や密室殺人、そして少年の…

舞城王太郎『暗闇の中で子供』(ISBN:4061822063)

『煙か土か食い物』の、時系列でいえば後日談。奈津川家四兄弟の昼行灯的存在の三郎がここでは主人公。先の事件を真似た猟奇殺人事件がこの西暁町でまた起きている。果たして、この犯人の目的は?そしてどんな見立てをしているのだろうか?? そんなある日、…

舞城王太郎『煙か土か食い物』読んでます

まだ終わらないので自分で課したルールではここには書き込まないのだけれど、今回は特別。ところで、この『煙か土か食い物』というタイトル。昨日気付いたのだけれど、松井須磨子が演じた「カルメン」の主題歌の一節から派生したものなのでしょうか? という…

清水義範『主な登場人物』

パスティーシュというのはある事物を対象として例えばこれをaとする。で、ここからできるa'がパスティーシュなんだと思っている。事物は特定されるもののこともあれば、比較的一般化された観念がターゲットとなることもある。これらの小説を読むとき他の作品…

ブレット・イーストン・エリス『レス・ザン・ゼロ』ASIN:4151200231

わわわ。何か、とんでもないものを読んでしまった気分。この乾いた空気感と虚無感。現在も未来も信じられない社会の若者特有の持ち物。それって、今の日本のことじゃないの? 「いるものなんか、もうないじゃないか。何だって持ってるんだから」俺はそういっ…

フランク・アバネイル他著『世界をだました男』ISBN:4102227210

あるときはパンナムのスマートなパイロット、あるときはハーバードロースクール卒の法律家、またあるときは悠々自適の生活を送る医師…そんな彼はなんとティーンエイジャー。 嘘のようなホントの話。裕福な家庭に生まれた彼は、金のうまみを知っていてとうと…