MJ

「アタック・ナンバーハーフ」

 気軽に見られる作品として借りてきたけど、期待してたよりもよかった。オカマで構成されたバレーボールチームが快進撃を続けるタイスポ根コメディ。

オカマのバレーボール選手がチーム内で受け入れられず浪人生活を送っているモン(ニムプーンサワット)。ある日、バレーボール選手選抜のポスターを見て、友人のジュン(ウィーラカーミン)とともに応募する。無事二人とも選手として採用されるが、おなべの監督、オカマのチームメイトなんて耐えられない、と有力選手が皆出て行ってしまう。残ったのはモンとジュン、そしてジュンに一目惚れされたチャイ。「誰か、適当なものはいないか」と持ちかけられたモンたちは、大学時代のバレーボール仲間を次々とスカウトしてくる。チャイがおそれていたとおり、全員がオカマちゃん!しかも性転換手術をしたピア(ベンジャーティグーン)なんかもいたりする。

 試合は、漫画みたいな快進撃だがコンディションには波がある。そして、本大会に出場となると、彼ら「オカマ」をオフィシャルな存在にしてはたまるか、と、様々な妨害に遭ったりもする。何となく、タイはオカマが多いという認識なのでそういう人たちにも寛容なのかと思えば、その差別意識は私たちとあんまり変わらないんだなあ、というのに驚いた。キャラが立っている彼らは世間の注目の的。彼らを熱烈に応援する人たちも出てきて、会場は熱気ムンムン。そんなクライマックスで大会委員長が発する差別発言は、図らずしも(図ってるけど)会場中に響いてしまうことになる。話自体は結構トントン拍子で進んで「こんなに単純なわけは無いよなあ」と感じはするけど、マイノリティとして生きてきた彼女(?)たちが生き生きとプレイする様はなんだか気持ちいい。最初はオカマの賑々しさを苦々しく思っていたチャイもとうとう彼女たちと心をひとつになる。
 なんだかんだ言っても、監督が人格者だったことがこのチームを纏めた一番の力なんだと思うけれど、オカマだって考えてみれば肉体は男性。男性と互角に戦えるのは当然だわね。まさか「オカマのみ(正確にはストレートの男性が1人混じってる)」のチームができあがるとは思わなかったけど。

 何より驚いたのが、この後おまけのテレビスポットCMなどの映像を見ていたとき。ええっ、これって実話だったの?来日インタビューなどでもその話は出ていて、エピソードなどもその当事者を入れ替えたりはあったけれど、結構忠実に作ってあるらしい。おまけには、映画宣伝でテレビ出演したメンバーの番組も含まれていて、さすがに30分間ずっとタイ語を聞いてるのは辛かったけれど、本物のチームメンバーも出てきたのでそれぞれを見比べると案外と顔立ちが似てるのにもまたびっくり。顔で選んだんじゃないかと思うくらい。
 一人、性転換手術を受けたピアは本物の女性と比べても女性らしいし美しい。何度も「この人女?」と思ったくらい。それと、ジュン役のウィーラカーミンは、ネプチューンのホリケンがコントでよくやる女の子キャラそのまんまだったのでつい二人を重ねてしまった。男に戻った素顔も似てる。

 この手の作品で不満なのはその題材となる試合風景で、この辺がいかにも「作り物です」になってしまいチープ感が漂ったのが残念。素人がやってるんだし仕方ないんだけど、この辺りって映像なんかでうまく処理できたりしないのかなあ。合宿して特訓までやったらしいのにこんな感想も何だけれど、まあ、メモ程度に。

  • 2000年・タイ
  • 原題(英題?):Satree-rex
  • 監督:ヨンユット・トンコントーン
  • 出演:チャイチャーン・ニムプーンサワット / サハーパープ・ウィーラカーミン / ジェッダーポーン・ポンディー / ジョージョー・マイオークチィ / ゴッゴーン・ベンジャーティグーン / エーカチャイ・ブーラナパーニット / シリタナー・ホンソーポン