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[BOOK][comic]古屋兎丸『π』1巻 ISBN:4091867510

 クールな高校生夢人の密かな趣味は、「π理論」の実証。「π理論」とは、おっぱいの最高に美しい形を、πと黄金律で表したものである。それらを記した「おっぱいノート」も早11冊目。冒頭で理想のπを持つと予想される少女じゅんに出会い、中学生の時に神と崇めていた同人誌主催者の千聖に再会することによって、その道を突き進むことになる。
 夢人は、「π理論」のために高校入学前に30キロのダイエットを遂げ、美少年と変身したが、勿論それは土台がいいからであって同じ目論見のために同じ努力をした千聖とは雲泥の差である。そんなある日、美しいおっぱいは保護されるべきと、「パイダーマン」なる正義の味方(?)に変身するようになっていく――。

 まあ、この物語のおもしろみは一見クールな夢人君が実はその昔はデブのオタクであり、中身は今も変わってない、皮一枚の存在であるのをどう隠し通すのか、そしてその外見と内面のギャップを外側から見る面白さなんだろう。彼が見初めたじゅんは、登校第一日目に痴漢に遭ってしまい、それ以来不登校になり男性不信に陥ってしまったという設定である。じゅんは夢人と心と心のつながりを求めているのに実際夢人の側はあくまでも「理想のπ」の対象でしかない。そしてまた、元はにたような存在であった夢人と千聖に対するじゅんの態度などなど、ジレンマだらけのこの作品、面白くてつい単行本を買ってしまった。女の子はかわいいし、醜い存在はそれなりに醜いし、夢人はかっこいいし。そういった「図式化」もまた、絵柄故のものなのだろうなあ。美醜を描き分けられるというのは、やっぱり貴重な才能なんだろうなあ。