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舞城王太郎『世界は密室でできている。』ISBN:4061822462

 『煙か土か食い物』などの奈津川ファミリーサーガの外伝的な位置づけ?講談社ノベルスの20周年記念による、メフィスト賞作家の密室競作本の一冊。彼にこんなもの書かせたら大変なことになるだろうと思ったら案の定。残忍な殺人事件や密室殺人、そして少年の日の隣のお姉さんの飛び降り自殺。それらの謎を、隣のお姉さんの弟で主人公の友人であるルンババ12と解明していくことにする。
 ルンババってホントに名探偵だったんだね。修学旅行の最中に行方不明の主人公を追ってちゃんと埼玉まで来ていることを突き止める。一体どうやって!?

 舞城は、思春期の少年を書くのがうまい。毎日がきらきらしていたそんなときを、懐かしく見せてくれる。そんな状態のまま成長してしまったのはそのお姉さんの死に起因していることであり、それを解決しないと一生背負っていくことになるのは確か。これに、高校生の時にお姉さんを喪ってしまった女の子エノキが加わり、またしても甘酸っぱい雰囲気が!ああ!!

 密室は、「これでもか!」というほど出てきて、特に「第五の密室」なんて、何じゃありゃー、である。それでもやっぱり舞城は「ミステリの人」なんだろうか。そっからはみ出してばかりにしか見えないんだけど。だからこそ、そこから飛び出た一般ジャンルではこの毒々しさがうまく発揮できないのかな?講談社ノベルスの一連の作品の方がずっと楽しいのね、この人のは。まあ、『熊の場所』は短編だったから、ということもあるかも知れないけど。『阿修羅ガール』はすぐ読もうか少しおいてから読もうか悩んでいるところ。