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阿部和重『シンセミア』ASIN:402257870X / ASIN:4022578718

こちらはまだ読んでいる途中なので、あまりきちんとした感想は書けない(って、今まできちんとした感想を書いたことがあったのかは疑問ですが)。芥川賞候補になった『ニッポニアニッポン』以来、2年ぶりになる待ちに待った新作。連載形式で追いかけて読むのはあまり私には向いていないようなので、ただひたすら単行本になるのを待っていたのでした。あちこちでこの作品に関して「今までの阿部作品とは違う」と言われているようでちょっと構えていたのだけれど、実際読んでみると「ああ、相変わらずの阿部節じゃん!」と嬉しくなってしまう。この人の文章はビートが効いていて、その力強さと、裏腹の軽妙さが好み。そして、くそ真面目な文章で描かれた事象は、そこはかとなく間抜けでおかしみがある。語り手さえもが図らずもその渦に巻き込まれてしまっているところがひどく面白く感じるのだ。

いつにも増してお下劣な話が続くのだけれど、これは先を読むのが楽しみだ。山形県の片田舎(…と言っては失礼になるかも。実在の街だし)神町という農村を舞台に、せせこましいのかどでかいのかよく分からない事件が次々と起こる世紀末。